INSTANT KARMA

We All Shine On

The Beatlesから半世紀

「はっきり言おう。ビートルズは突然変異だ。神から遣わされた進化の因子のプロトタイプだ。人類の新しい種を、若く、笑い声を上げる自由な人間たちを生み出す神秘的な力を持っている」

ティモシー・リアリー

ザ・ビートルズが来日して、今年で50周年だとか。 前座を務めたザ・ドリフターズの面々や内田裕也氏の現在を見るにつけ、この半世紀で何かが大きく変わったような、何も変わっていないような。 ビートルズの出現(1962年〜)以前と以後では世界が変わってしまったことは誰もが認めている。

「彼らは、アメリカの大衆文化の影響下にある戦後の重苦しいイギリスに出現した。イギリスの若者は、活気のない単調な環境から抜け出す必要に迫られ、逃避の手段をアメリカの映画、ストリート・ファッションやロックンロールの中に見出していた。」

マイク・エバンス

ビートルズはその状況を一変させた。そのインパクトは、50年経ってもなお息づいている。

ビートルズが私たちを最も勇気づけたのは、ひとつには世界中の人々は同じ感性を持ち、同じものを賛美していると彼らが示してくれたことだった。私たちはビートルズの音楽を愛したが、同じ音楽を全く同時に何億人もの人々が愛しているのはすばらしいことだった。  

クラシック音楽も、ほかのどの国の、あるいはどの人種の音楽も、ジャズさえもできなかったこと、そしてほかの誰も―ビング・クロスビーエルビス・プレスリーフランク・シナトラも―できなかったことを、ビートルズは成し遂げた。彼らの音楽は、若者にも年配者にも、金持ちにも貧乏人にも、スノッブにも何でもありの連中にも浸透したのである。」

R・D・レイン

渋谷で上映されている『森のカフェ』という映画を見に行ったとき、立ち寄ったタワレコで、ビートルズの「Paperback Writer」の鮮明なカラー映像が流れているのを見て目を奪われ、いったんは我慢したものの耐え切れずに翌日『ビートルズ1』のCDとDVDを購入した。家で見ていると、中学受験を間近に控えた娘まで夢中になってしまった。 以来、ビートルズの何が画期的だったのか、何が魅力なのか、という、数年に一度はきまって憑りつかれる、決して答えのない問いにまたもや取り組むことになった。

「彼らは…ほかのどのグループとも一線を画するサウンドを持っている。だが実際に人々を魅了し、少女たちに午後8時のショーのためリバプール・グラフトンの外で5時30分から列を作らせる理由は、彼らのルックスにあると私は思う。…ジョン・レノンは毒舌家、ジョージ・ハリソンは気まぐれで大らかな美男子、ポール・マッカートニーは童顔、リンゴ・スターは魅力的な醜男である。」

モーリーン・クリーブ『イブニング・スタンダード紙』

シド・バレットはこう言った。若い連中がビートルズを好きなのは、…大部分は音楽のせいではなく、彼らがいつもしたいことをして、誰に対しても勝手気ままにふるまっているからなのだと。「だから若いヤツらは彼らが好きなんだ―彼らはやりたいことをやってるからさ。若いヤツらにはそれがわかってるんだ」

(『メロディ・メイカー』1967年12月9日)

わりと最近出版された『ビートルズの真実』(中公文庫、里中哲彦, 遠山修司著)という本を興味深く読んだ。ビートルズ前史から解散まで、幅広く深い知識に基づいて語られる両者の見解にはほぼ共感したが、彼らがビートル解散後のジョン・レノン(とオノ・ヨーコ)の活動についてほとんど全否定に近いネガティブな意見を持っていることに寂しさと違和感を覚えた。彼らの意見を「真実」とされるのではジョンの立場がなさすぎる、と思った。この件については改めて書いてみたいと思う。 とりあえず今解明しなければならないのは、ビートルズの意義と魅力の源泉なのであった。

「彼らは冷戦の間、資本主義の大きな脅威とみなされていた。しばらくすると、ローリング・ストーンズのアルバムは国に持ち込むことができた。だが、ビートルズのアルバムは持ち込めなかった。それはなぜか? ビートルズがひとつの現象だったからだと思う。ローリング・ストーンズは単なるロック・バンドだったが、ビートルズは今世紀の文化的現象だった」

ユリ・ベルユシュノク博士、ソ連

ルックスの良さ、自由奔放でウィットに富んだな振舞い、といったものに加えて、ビートルズの奇跡には、彼らが驚くほど短期間に量産した楽曲の良さ、が挙げられる。

「ところで、私はもうすぐ64歳になるが、A Day In The Life のメロディは今なお私に若さと元気をくれるし、感覚と感性に刺激を与え続けてくれる」

レナード・バーンスタイン

「主音の構成という点では『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は奇妙に不安定だ。ト長調の明るい感じに下降していくかと思えば、イントロではDとFのドミナント・セブンスの間でぐらつく。それに旋律全体と、紹介の後で演奏淘汰を始めるバンドについて言えば、もたついたアルペジオの旋律のリズムがよろよろとクロスアクセント(3対2)に置き換えられ、オープン・トーナリティは陰気な調子はずれの関連和音で曇らされている。」

ウィルフレッド・メラーズ

単純な楽曲の良さでいえば、彼ら以上に美しいメロディーや躍動的なリズムや優れた楽想を創造した作曲家やミュージシャンはいるだろうし、これからも出現するだろう(たぶん。そうあってほしい)。モーツアルトやバッハといった人類史的超人を挙げるまでもなく、20世紀にもチャーリー・パーカーマイルス・デイヴィスなどの偉大なミュージシャンが存在した。

しかしビートルズが唯一無二なのは、彼らはまさに「必要な時に、これ以上ないタイミングで、最も必要とされる楽曲を提供した」という点にあった。世界が必要としているジャストなタイミングでジャストなサウンドを鳴らした。それは、人々が求めている「ほんの少し」先を行く表現形式の提示だったことも含め、まさに時を得たサウンドだった。

…とまあ、考えていくときりがないのだが、こうやって常に未知の問いを投げかけてくれる存在なのだ、僕にとって、ビートルズとは。 世界はもう、1960年12月にリヴァプールのクラブで四人のふてぶてしい若造が Some Other Guy (どっか他の奴)とかいう荒々しいナンバーを演奏する前の状態には、決して、戻ることはないのだ。

「僕は『サム・アザー・ガイ』みたいなレコードを作りたいんだ。あれぐらい、僕に満足を与えるレコードは、まだ作っていないからね」

ジョン・レノン 

1968年 ※引用はすべて、ビートルズ 世界証言集』(ポプラ社より

 

帰れ(GET BACK)  (レノン・マッカートニ作 菊地成孔訳)

 

ジョジョは、自分を孤独な男と思っていたが、

それが長く続くとは思っていなかった

ジョジョは、アリゾナ州ツーソンの家を出た 

カリフォルニアの大麻が欲しくて

帰れ

帰った方がいいよ 

もと居た所に 帰れ 

帰った方がいい 

お前が元々居た場所に

帰れ 家に帰れ 帰った方がいい 

元々いた所にね

帰れ 帰った方がいい

お前が元々居た場所に帰るんだ

帰るんだ 

ジョジョ 可愛いロレッタ・マーティンは 

自分を女だと自覚していた

実際は男だった

御同輩の 髭を剃るガールズたちはみんな

「どうせ後で泣きを見る」と警告したのに

彼女は今のうちだけでも楽しんでおくつもりだ

帰れ 帰った方がいい 

元々いた所に

帰れ

帰った方がいい

お前が元々居た場所に帰るんだ 

ロレッタ 家に帰れ 

帰った方がいい

元々いた所に

帰れ 帰った方がいい

お前が元々居た場所に帰るんだ

帰れ、な?