INSTANT KARMA

We All Shine On

西村賢太

命日に想う(時事ネタで申し訳ない)

元より彼は、はなから書き手を目指していたわけではない。新人賞に応募したこともないし、そも純文学一般には未だに何んの重きを置いてもいない。 したがってこれまでに同人雑誌に書いた三作は無論のこと、もしこれからも引き続き書く流れができたところで、…

N/M/N/K

先週末、"Hair Stylistics For SALE” Masaya Nakahara Collection Garage Sale が行われ、その際に以下のアナウンスがあった。 (以下XのアカウントV.I.N.Cent Radio@VincentRadioより転載) 1月に中原昌也さんが倒れたくさんの支援が立ち上がりました。 わ…

一作曲者の日乗

先日、二瓶哲也『それだけの理由で』を読んでの感想に、 西村賢太という存在が失われて、もう小説というものには縁が切れたかな、と思いかけていたところだったが、まだ二瓶哲也という作家がいてくれた、と思えたことがうれしい。 と書いたが、今度はうれし…

愛憎一念

wellwellwell.hatenablog.com 小谷野敦氏がこの記事にSNSで言及してくれたみたいでアクセス数が上がっているが、 (西村賢太の評伝を書くのは)会ったこともないのに無理です。阿部公彦君にでも期待しましょう、とのこと。 残念だけど仕方がない。でも「賢太…

破滅の作家

BSで昨夜放送された西村賢太の特集番組を見た。 以前地上波で放送した番組の90分拡大版。 前回の放送時には物足りないと酷評した記憶があるが、時間が増えた分、過去のNHKのフィルムなどもふんだんに使った見応えのある内容だった。 いちファンとして、制作…

評伝 西村賢太

先週くらいからずっとそこはかとない倦怠感と頭痛が続いていて今週末もずっとそんな感じ。熱っぽさはあるが熱はない。これって… 「本の雑誌」の最新号を読んだら、小谷野敦の「アマゾンレビューから追い出されて」という記事が載っていた。 最近出版された『…

尾形亀之助年譜(備忘録)

国会図書館デジタルコレクションで読める昔の雑誌より、戦前のボヘミアン詩人尾形亀之助(おがた かめのすけ、1900 - 1942)のエピソードを拾って、ウィキペディアの略歴に挿入。なので不正確なところは多々あるやしれず、個人的な備忘録なので適宜修正して…

季節のない街

natalie.mu 宮藤官九郎が企画・監督・脚本で山本周五郎の小説「季節のない街」を連続ドラマ化。全10話が8月9日にディズニープラスで一挙独占配信されることがわかった。宮藤の監督作は2016年の映画「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」以来7年ぶりとなる。 原…

遺したものは

NHKで西村賢太の特集番組をやっていたのを見た。 www3.nhk.or.jp 今朝から寝違えた首をはじめとして全身のあちこちが痛く、湿布を貼っても全然痛みが引かない。そういえば西村賢太の日記にはいつも首やら腰やら全身の痛みに苦しんでいる描写があったなあ、な…

日乗

BSプレミアム、BS4Kで4/3(月)より半年間「あまちゃん」再放送が始まっている。 毎週月~土 午前7:15、毎週日曜 午前9時からは1週間分6話連続で放送。 このブログには過去さんざん「あまちゃん」や能年玲奈(現:のん)について書き散らしてきたし、もう今更…

Anti-anti- natalism

つげ義春が描く世界って、退廃的に見えるけど、あの墨ベタとか塗りまくりの絵にはすごくしぶとい実存的なオーラがあって、実はものすごく、生きる、生きているってことを描いている漫画だと思う。もうどん底でボロボロに、ドロドロになりながら、こんなに悲…

Sarlet Flower

つげ先生お元気そうで嬉しい。もう終わっちゃったけど。 またやってくれねえかな。 youtu.be これはちょっとした考察というか雑感ですが、山田花子が好きでガロ系の漫画も読んでいたに違いない西村賢太がつげ義春について全く言及しなかったのは、つげを評価…

過去のどこかで

昨日は西村賢太の音楽的嗜好について考えてみたが、 今日は<漫画>について。 西村賢太の作品(主に随筆)に登場する漫画の中で一番重要なのは、山田花子だろうと思う。2008年1月5日の日記(松の内抜粋「野性時代」)に、次のような記述がある。 平成四年に…

No Novel No Life

今日のはまあ箸休めみたいなもので。 西村賢太の文学的嗜好については作家本人があらゆる小説や随筆で詳細に述べているので改めて取り上げるべきものはない。昨年に出た『誰もいない文学館』においても、まとまったかたちでの本人による解説がある。 そこで…

Bat or Swallow

私個人は、こと小説に関しては、ただ才にまかせただけの観念の産物よりも、その作者自身の血と涙とでもって描いてくれたものでなければ、まるで読む気もしないし書く気も起らぬ 『どうで死ぬ身の一踊り』跋より 私小説作家・西村賢太の命日である二〇二三年…

I Remember Kenta

『週刊SPA!』山田ルイ53世氏との対談より 僕は(芥川賞を受賞した)40代のときはものすごく元気だったんです。しかし、50代に入ると気持ちに変化が出てきた。先が見えて、今後自分の人生に劇的な変化が起こらないことも、くっきり見えてしまった。 気力や体…

Remember Kenta

いわゆる青春がないことに、さみしかったり後悔したりは全くありません。比べる相手がいなかったから。自分を「不幸だ」と感じるのだとしたら、比べてるからじゃないのかな。上をみたらキリがないもんね。ひどい目に遭い続けて、心が死んでいって、諦めて、…

Die Psychoanalyse von Kenta Nishimura

西村賢太の私小説について、エセ精神分析的にやってみる。 あくまでもお遊びなので、西村賢太ファンの方及びサイコアナリーゼを真面目にやっている方は怒らないでください。 まず「北町貫多」というネーミングについて。 この名前が、作家の本名である「西村…

NDL

朝、土砂降りの中を国会図書館へ。開館時刻の午前九時半に着くと、既に土砂降りの中を百人位の人たちが入口に並んでいた。 コロナ以前であれば、開館時間内に行けば入場できないことはなかったのだが、今は在館者数が1,000人に達した時点で入館を拒否されて…

パパが貴族

吉田豪とのYouTubeの対談を見て興味を持ち、山田ルイ53世の「パパが貴族」という本を読んでみた。 非常に面白かった。文体に明らかな西村賢太の影響を感じた。 西村は山田と2021年5月20日(木)に「週刊SPA!」の企画で対談している。このときのことを西村は…

Killing w/ Kindness

政治というのは建前の世界で文学は本音の世界だから両立させるのは無理があると思う。両立させるというのは、両方で一流の仕事をするという意味で、石原慎太郎や今東光は両立させたとはいえない。ウィンストン・チャーチルはどうなんだと言われたら、チャー…

The Honor of a Value Disruptor

石原氏の政治家としての面には毫も興味を持てなかった。しかし六十を過ぎても七十を過ぎても、氏の作や政治発言に、かの『価値紊乱者の光栄』中の主張が一貫している点に、私としては小説家としての氏への敬意も変ずることはなかった。(「胸中の人、石原慎…

西村賢太追悼文集を読んで

『西村賢太追悼文集』(COTOGOTOBOOKS)を読了。 賢太とは面識のない愛読者から付き合いのあった編集者、同業者まで、送られたもの全部載せました(既出の追悼文の転載もあり)という感じなのでゴッタ煮感があるが、それが編集の狙いで、「色んな人が好き好…

Requiem for K

「西村賢太追悼文集」(COTOGOTOBOOKS)が届いた。 これを読み終えたら、いよいよ賢太とのお別れに一段落つくような気がして、なかなか本を開けないでいる。 明日の朝までに読み終えることができるだろうか。

芥川賞と西村賢太

第167回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が20日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は高瀬隼子(じゅんこ)さん(34)の「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)、直木賞は窪美澄さん(56)の「夜に星を放つ…

Drive

「週刊読書人」に西村賢太「雨滴は続く」の書評(豊崎由美と長瀬海の対談)が載っているというので買って読んでみた。 豊崎由美は西村の小説を早くから評価している人で、西村自身も何度も作品の中で言及している<西村賢太読みのスペシャリスト>である。今…

西村賢太年譜(「日乗」以前)

芥川賞を取って以降の生活は「一私小説書きの日乗」で(一部改変もあるとはいえ)作家自身により明らかにされているので、それ以前の年譜を作成してみた。限られた資料に基づくため、もちろん正確でない部分もあろうし、私小説の内容に基づく記載はフィクシ…

西村賢太著作一覧

西村賢太名義(編著含む)の著作を年代順に並べてみた。追悼集も入れた。 右横に数字を付したのは単著の発行順番。<一私小説家書きの日乗>に、見本が届いた日には必ず「・・冊目となる単著」と書かれているので、その数字に合わせた。発刊は2011年以降は<…

西村賢太小説作品(発表順)

北町貫多の私小説の舞台を時系列に並べたものとは別に、西村賢太の私小説を執筆(発表)された順番で並べたものを作ってみた。 赤字は<秋恵もの>。右の数字は<日乗>に書かれていた枚数。 1室戸岬へ(『田中英光私研究』第七輯1995年11月)単行本未収録 2…

続・西村賢太さんを偲ぶの記

昨日の記事にツイッターで言及して下すったかたがいて、けっこう見られたようなので、お別れの会で撮った写真をまたアップします。 もっと撮ればよかったな、と思いつつ、きっとそのうちどこかの記念館に展示されることになるに違いない、と思うので、そのと…