War Is Over

 if you want it

西村賢太

Die Psychoanalyse von Kenta Nishimura

西村賢太の私小説について、エセ精神分析的にやってみる。 あくまでもお遊びなので、西村賢太ファンの方及びサイコアナリーゼを真面目にやっている方は怒らないでください。 まず「北町貫太」というネーミングについて。 この名前が、作家の本名である「西村…

NDL

朝、土砂降りの中を国会図書館へ。開館時刻の午前九時半に着くと、既に土砂降りの中を百人位の人たちが入口に並んでいた。 コロナ以前であれば、開館時間内に行けば入場できないことはなかったのだが、今は在館者数が1,000人に達した時点で入館を拒否されて…

パパが貴族

吉田豪とのYouTubeの対談を見て興味を持ち、山田ルイ53世の「パパが貴族」という本を読んでみた。 非常に面白かった。文体に明らかな西村賢太の影響を感じた。 西村は山田と2021年5月20日(木)に「週刊SPA!」の企画で対談している。このときのことを西村は…

Killing w/ Kindness

政治というのは建前の世界で文学は本音の世界だから両立させるのは無理があると思う。両立させるというのは、両方で一流の仕事をするという意味で、石原慎太郎や今東光は両立させたとはいえない。ウィンストン・チャーチルはどうなんだと言われたら、チャー…

The Honor of a Value Disruptor

石原氏の政治家としての面には毫も興味を持てなかった。しかし六十を過ぎても七十を過ぎても、氏の作や政治発言に、かの『価値紊乱者の光栄』中の主張が一貫している点に、私としては小説家としての氏への敬意も変ずることはなかった。(「胸中の人、石原慎…

西村賢太追悼文集を読んで

『西村賢太追悼文集』(COTOGOTOBOOKS)を読了。 賢太とは面識のない愛読者から付き合いのあった編集者、同業者まで、送られたもの全部載せました(既出の追悼文の転載もあり)という感じなのでゴッタ煮感があるが、それが編集の狙いで、「色んな人が好き好…

Requiem for K

「西村賢太追悼文集」(COTOGOTOBOOKS)が届いた。 これを読み終えたら、いよいよ賢太とのお別れに一段落つくような気がして、なかなか本を開けないでいる。 明日の朝までに読み終えることができるだろうか。

芥川賞と西村賢太

第167回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が20日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は高瀬隼子(じゅんこ)さん(34)の「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)、直木賞は窪美澄さん(56)の「夜に星を放つ…

Drive

「週刊読書人」に西村賢太「雨滴は続く」の書評(豊崎由美と長瀬海の対談)が載っているというので買って読んでみた。 豊崎由美は西村の小説を早くから評価している人で、西村自身も何度も作品の中で言及している<西村賢太読みのスペシャリスト>である。今…

西村賢太年譜(「日乗」以前)

芥川賞を取って以降の生活は「一私小説書きの日乗」で(一部改変もあるとはいえ)作家自身により明らかにされているので、それ以前の年譜を作成してみた。限られた資料に基づくため、もちろん正確でない部分もあろうし、私小説の内容に基づく記載はフィクシ…

西村賢太著作一覧

西村賢太名義(編著含む)の著作を年代順に並べてみた。最後に追悼集も入れた。 右横に数字を付したのは単著の発行順番。<一私小説家書きの日乗>に、見本が届いた日には必ず「・・冊目となる単著」と書かれているので、その数字に合わせた。発刊は2011年以…

西村賢太小説作品(発表順)

北町貫多の私小説の舞台を時系列に並べたものとは別に、西村賢太の私小説を執筆(発表)された順番で並べたものを作ってみた。 赤字は<秋恵もの>。右の数字は<日乗>に書かれていた枚数。 1室戸岬へ(『田中英光私研究』第七輯1995年11月)単行本未収録 2…

続・西村賢太さんを偲ぶの記

昨日の記事にツイッターで言及して下すったかたがいて、けっこう見られたようなので、お別れの会で撮った写真をまたアップします。 もっと撮ればよかったな、と思いつつ、きっとそのうちどこかの記念館に展示されることになるに違いない、と思うので、そのと…

西村賢太さんを偲ぶの記

昨日のお別れ会に出席できなかったかたがたのために、配付された小冊子に載っていた貴重な写真をアップしておく。このブログの読者数なぞたがかしれているのでほぼ意味のない行為ではあるが。 ちなみに、2002年(平成14年)35歳の時に七尾図書館で講演した時…

Farewell My Dear

朝信号待ちをしていると立て続けに青い護送車が二台目の前を通り過ぎた。 今日はメルパルク・ホテルで西村賢太献花のお別れの会があるので行こうかどうしようか直前まで迷っていたが、阿部公彦教授のツイートでゆかりの品も展示されるというのを見、「ビバリ…

Yellowed Handwriting

黄ばんだ手蹟(『文學界』2018年1月号) 「陋劣夜曲」(『群像』2018年1月号)の下書きを終えた2017年11月21日の深夜の場面から始まる。ほっとして部屋にある清造の額を眺めていると、18年ほど前に作った扁額の中の書簡がずり落ちてしまっているのに気づく。…

Photographs

このところ自分でも意味の分からないままに熱中していた、西村賢太の日記(一私小説書きの日乗シリーズ)の抜粋を打ち込むという作業をようやく一通り終える。この間も毎日西村賢太についてブログに記事を書いており、ほとんど「寝ても賢太、覚めても賢太」…

なぜ藤澤清造なのか?

やがて彼は帰って来た。……五百枚にあまるその作を大切に抱えて…… われわれはほとほとその努力に感心した。…ということは、何のあてもなく、かれはその作を書いたのである。どこに掲載してもらえるあても、どこで出版してもらえるあてもなしにかれはその長編…

「野狐忌」2

1993年に西村が参加した田中英光展を主催したという「いわゆる無頼派作家の研究サークル」というのは、1990年に朝日書林から「仮面の異端者たち : 無頼派の文学と作家たち」という本を出版している「無頼文学研究会」という団体のことではないか。但しこの催…

「野狐忌」

西村賢太「田中英光私研究 第八輯」に収録された小説「野狐忌」は、今振り返ると、西村の生涯の一つの時期が終わる直前に書かれた、文字通り記念碑的な作品といえる。 この小説で最も重要な部分は、最初のほうにさりげなく書かれた箇所で、西村はたぶんその…

「室戸岬へ」3

もう一度問うてみる。西村賢太にとって田中英光とは何だったのか。 中学生のころからマニアックな探偵小説を読み耽り、いずれ小説家になりたいとの思いをふとこっていた少年が、田中英光の小説と出会って、異常な衝撃を受け、「ぼくの人生観は変わった」とま…

「室戸岬へ」2

私小説である以上、主人公の今の境遇というものが大切な問題になってくる。 <ぼく>は、高知で最初の夜に入った居酒屋で、偶々一緒になった客から仕事について尋ねられ、東京の神田で古本屋をやっていると答える。小説の初版本を売って食っているが、店はな…

「室戸岬へ」

この小説は、先にも書いた通り、田中英光の「室戸岬にて」という小説についての取材旅行記という形を取っている。 当時「田中英光私研究」という小冊子を発行していた西村は、精力的に全集未収録の英光作品を発掘、解題し、英光の旧友・関係者から聞き書きを…

「室戸岬へ」と「野狐忌」

国会図書館から西村賢太が「田中英光私研究」に発表した二つの小説の写しが届いた。 「室戸岬へ」と「野狐忌」である。 「室戸岬へ」は、「田中英光私研究第七集」での、田中の全集未収録の小説「室戸岬にて」の発表に合わせて書かれたもので、西村自身がそ…

Wild Fox in Cape Muroto

田中英光私研究第七集所載の小説「室戸岬へ」と同第八集所載の小説「野狐忌」の複写製品が届いた。 複写単価が25円、数量(頁数)59枚で1,475円、発送事務手数料250円の小計1,725円に消費税172円、これに送料390円が加算され、合計2,287円の請求となったが、…

慊い

私が、国会図書館の遠隔複写サービスというのを使って、西村賢太が「田中英光私研究」に載せた小説「室戸岬へ」と「野狐忌」のコピーを申し込んだのは、六月十七日のことであった。 はな、かような慣れぬ手段を取ることにしたのは、その日、日中に無理をして…

風味絶佳

西村賢太の人生は何てスタイリッシュでエレガントにできてるのだろう。 十五歳で家を出て、三十歳で藤澤清造の没後弟子となって、四十五歳で芥川賞を取り、五十五歳で亡くなる。若干の誤差はあるが、まるで計ったように十五年(最後は十年)刻みで人生の大イ…

A Born Stylist

週末は図書館で「本の雑誌」バックナンバーの「一私小説書きの日乗 這進の章」をコピーし、自宅でそれを打ち込む作業をしていた(全部ではなく抜粋)。 最後の日記は、今年の1月7日で終わっている。ちょうどそれが、藤澤清造の菩提寺西光寺での藤澤家代々…

憶測に次ぐ憶測(追記あり)

ゴキブリじみた一読者が死んだ作家に対するストーカーめいた詮索行為を続ける。 西村賢太は、「群像」2009年6月号に発表した小説「膿汁の流れ」の中で、つい最近まで世田谷区尾山台に本籍地があったと書いている。 彼の生まれは江戸川区だが、11歳の時に両親…

No Man's Literature Museum

購入。刊行に尽力された「本の雑誌」社杉江由次氏のコラムによると、連載元である「小説現代」の講談社では本にする予定はないと言われ、すぐさま単行本化することに決めたという。 そしてなんと、図書館に行き、掲載誌を全回分コピーすると、ご自分で一文字…