INSTANT KARMA

We All Shine On

2021-01-01から1年間の記事一覧

欠陥

『私の作家遍歴』から気になった箇所を引用。 彼の手になる天国も地獄も、個性を欠いているために退屈なものである。多様で複雑な人間関係はそこにはないのだ。現実の中に生きる人間がそれぞれに面白いのは、まちがっていると見えて実は正当であったり、逆に…

例外

去年は「Begin Again Korea」という韓国の歌番組がお気に入りだったが、今年も同じような趣向で「Sea of Hope」という番組をやっている。 今回はミュージシャンたちが集まって海の家を運営するというような設定で、昨年に引き続き透明な歌声に惚れ惚れするAK…

私の作家遍歴

『私の作家遍歴』は、小泉八雲から始まって同時代のロシアの作家(ゴンチャロフ、ツルゲーネフら)へと遍歴し、そこからドストエフスキーとトルストイのこと(主にトルストイのこと)を延々と語り始めるのだが、印象的な文章を備忘録的に抜き出しておく(と…

小説の鬼

水声社の「小島信夫 批評集成」の月報がなかなか面白い。 小島信夫の蔵書には、コリン・ウィルソンの著作が三冊ある。 『小説のために―想像力の秘密』 『ラスプーチン』(サンリオSF文庫) 『SFと神秘主義』(サンリオSF文庫) 「小説のために」と「ラスプー…

第三の新人

今読んでいる水声社の「小島信夫批評集成4」の月報に、鶴見俊介が寄せた文章があり、これが書いた人の困った顔が浮かんでくるようで面白かったから引用する。 小島信夫は戦後に第三の新人として現れた。「小銃」から私は好んで読んできた。彼は長生きして、…

心残りがとれ心の贅肉が落ちている

昨日、ブログに、「小島信夫は怖い作家である」「狂った磁場のようなものを出している」などと書いたおかげかどうか知らないが、あれから突然、数年来愛用していた電子機器が壊れたり、ラーメンズの小林氏がいきなり解任されるなどのショッキングな出来事が…

怪談のあがりはな

何がいいたいかというと、 小島信夫って怖い作家だ、ということだ。 別に猟奇趣味とかゴシップネタとか好奇心とか非難とかいうことではまったくなしに、世の中には、暴力的な意味ではなく、「こわい人」というのがいる。 その人の周囲では必ず何かが起こると…

壊れかけの妄想Radio

本日の一曲目:Azymuth - Fly Over The Horizon 全国0局ネットでお送りする妄想電波の時間がやってまいりました。さいきんテロリストと間違えられて国立競技場の前で職務質問をうけました、今夜のナヴィゲーター、コーネリアスこと小山田圭吾がお送りしてい…

大庭みな子

『大庭みな子全集』(日本経済新聞出版社)第22巻に載っている対談がおもしろい。 深沢七郎との仲の良さが伝わってくる対談もいいし、私小説をめぐっての佐伯一麦との対談もある。 もちろん小島信夫との対談もあって、これがまた面白いのだが、それについ…

対談・文学と人生

小島信夫と森敦の対談集「文学と人生」(講談社文芸文庫)を読んでいるが、単なる雑談と禅問答が入り混じったようなもので、ほとんど意味が分からない。 だが森敦の語り口調が、小島信夫の小説に出てくる森敦の口調とそっくりなのには笑った。大庭みな子や柄…

そして僕たちは途方に暮れる

週末に読んだ小説など 小島信夫『別れる理由3』 徳田秋声『新所帯(あらじょたい)』 佐伯一麦『渡良瀬』 佐伯一麦『鉄塔家族』 佐伯一麦『石の肺 僕のアスベスト履歴書』 和田芳恵『一葉の日記』 和田芳恵『暗い流れ』 綿矢りさ『インストール』 金原ひと…

Short Circuit

小島信夫の事故物件のような小説に付き合うのがしんどくなってきたので、今週は佐伯一麦の『ショート・サーキット 佐伯一麦初期短編集』に手を付けている。 佐伯一麦は、「端午」と「ショート・サーキット」という作品で二度芥川賞の候補になっているが、受…

Reason to depart

小島信夫『別れる理由』は第59章から「夢くさい」展開に入り、力のある作家が、自意識を奔放にぶちまければこうなる、といったような、映画でいうとフェリーニの「8 1/2」のような展開、筒井康隆にもたぶん似たような作品はあるがここまでではないだろ…

妄想ラジオ風ブログ(10)

今日の1曲目:Break On Through (To The Other Side) / The Doors こんばんは、渋谷陽一です。全国0局ネットでお送りしています、妄想夜電波、じつに前回から一年半ぶりのオンエアになります! この一年半のあいだに公私ともににいろんなことがありました…

すまほ

来年の3月でガラケーが使えなくなるとさんざん脅されて、とうとう観念してスマホに変えた。 とはいっても普段iPadを使っているので、iPhoneはそれまでのガラケーと同じ使い方しかしないつもり。 どうもああいうケイタイショップで職員の説明を聞いてい…

近松秋江

小島信夫の『私の作家評伝』で近松秋江が読みたくなり、青空文庫で読める『別れたる妻に送る手紙』、『うつり香』、『黒髪』、『狂乱』、『霜凍る宵』を読む。 秋江のこれらのシリーズ物は、俗に「ストーカー小説」とも呼ばれるが、何か江戸以前の古典文学を…

島崎藤村と小島信夫

小島信夫『私の作家評伝』は、漱石や鴎外はじめ日本の近代作家について論じたもので、とても読みやすく面白い。小島信夫本人がどこかで書いていたと思うが、「かゆい所に手が届くような」、玄人が読んでも唸るような(たぶん)内容になっている。 中でも興味…

What is Beauty for language ?

今読んでいる千石英世『小島信夫: 暗示の文学、鼓舞する寓話』という本の中で、小島信夫の息子がアル中になって記憶を失い、後妻となった愛子さんが健忘症になってしまった遠因は、小島信夫が私小説作家だったからではないか、と書いていて唸った。 青木健と…

謎解き亀山郁夫

水村美苗『新明暗』を読んで思い出したのが、亀山郁夫『新カラマーゾフの兄弟』である。 言わずと知れた、ドストエフスキーの大作『カラマーゾフの兄弟』を、現代日本社会を舞台にリメイクした問題作だ。 『カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーの死に…

魂のこと

『続明暗』を評して、作者が親しんできた日本近代文学、中でも菊池寛の『真珠夫人』のような通俗小説になってしまっている、という小論を読んだ(渡邊澄子『男漱石を女が読む』)。いくつかの具体的な個所について、漱石なら決してそんな書き方はしないとい…

Black and Blue Continued

小島信夫の『漱石を読む』という辞典のようにぶ厚い評論集(水声社)を読むために漱石の『明暗』を読み返し、さらに水村美苗『続明暗』というのも読む。 『続明暗』は、『明暗』の伏線をすべてきれいに回収するような形で、物語をうまくまとめてある。著者自…

続明暗

小島信夫『漱石を読む』から水村美苗『続明暗』についてコメントしている部分を抜粋する。 『続明暗』という小説を、ある女の人が書き上げ、それが本にもまとまったので、読むつもりであるが、締め切りがきてしまったので、間に合わなかった。すくなからぬ人…

姪と餡

こじのぶ(小島信夫)の『漱石を読む』が読みたくなったので、ナツソー(夏目漱石)の『明暗』を(青空文庫で)読み返す。 以前読んだことがあり、確かこのブログに感想まで書いているのだが、内容について完全に忘れており、初めてのようにワクワクドキドキ…

レペゼンぼく

「抱擁家族」ってバンドがあるみたいだが、小島信夫の小説と関係あんのかな。ないことはないだろうと思うが。 二十世紀の魔術師と呼ばれるアルメニア人・Gの弟子として知られるロシア人・Pは、「どんなものでもよいから君が導師から学んでいる修練の具体的…

小島信夫の文法

『小島信夫の文法』(青木健著、2017年、水声社)という本を借りて読む。 著者は、一時期小島信夫の編集者として接し、後に「小島信夫賞」の運営や選考にも係わり、「小島さんの10年余りの晩年、近くで濃密な時間を過ご」した。詩人で作家でもある。2019年…

死後の世界

物心ついたときから、死後の世界があるのかどうかが気になって仕方がなかった。 もし死んで何もなくなるのなら、生きている間に何をしようが「後は野となれ山となれ」で一向構わないということになるし、宗教のいうように天国と地獄というものがあって、善い…

精神世界遍歴

ぼくが大学に入学して東京に来た頃はバブルが弾ける前の最高の勢いにあったころで、出版業界もバブルだったのか、今なら出せないような様々な本があった気がする。 別冊宝島に「精神世界を読む」という特集号があって、本場からほとんど二十年遅れのニューエ…

聖骨

小島信夫の『暮坂』収録の短編「聖骨」などの中に、整体治療のようなことをやっている新興宗教のような団体Zとその指導者であるZ師のことが出てくるが、今はネット社会なのでちょっとキーワードをかけて検索すれば、それがMRT治良というものであることな…

『静温な日々』 『暮坂』 『うるわしき日々』

『静温な日々』小島信夫 『暮坂』小島信夫 『うるわしき日々』小島信夫 『こよなく愛した』小島信夫 『小説修業』小島信夫・保坂和志 『各務原・名古屋・国立』小島信夫 『残光』小島信夫 『暮坂』と『各務原・名古屋・国立』は古本屋で各八八〇円で買う。あ…

みちよと馬

小島信夫を読んで、純文学は美文でないといけないとか人間の感情や思考のアヤを丁寧に描かないといけないという先入観があっさり崩れた。 例えば、絵を描くためには、基本的なデッサンの力(絵心〈えごころ〉)が必要であるのと同じように、小説を書くために…