INSTANT KARMA

We All Shine On

2021-01-01から1年間の記事一覧

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二・二六事件のドキュメント(松本清張『昭和史発掘』)読んでいると、昭和維新という幻想を信じて蹶起した青年将校たちのナイーブさが他人とは思えなくなってくる。“行動を起せばあとは何とかなる”という無計画さ、全てを天皇の御心を信じるということの純…

Dear Kuta

日曜日、朝から飼い猫が窓際でぐったりしていて、これはもういよいよだな、と思う。娘もそう感じたのかずっとそばにいた。自分もそばの机で土曜日に図書館で借りてきた松本清張『昭和史発掘』をずっと読んでいた。 妻が小さな段ボールに毛布を入れて寝かせた…

昭和史発掘

松本清張の力作『昭和史発掘』(文春文庫、新装版、全9巻)を読んでいるが、面白い。 この作品は折に触れて何度も読み返しているが、読み返す度に新たな発見があり興味深い。 彼が週刊文春にこのシリーズを連載し、ちょうど二二六事件について筆を進めてい…

Synpathy For Brian

中学に入ってまずビートルズが大好きになった。ローリングストーンズは、ビートルズのライバルとして名前は知っていたが、ビートルズを聴いていれば十分満たされていたので積極的にストーンズを聴く気にはならなかった。 初めてストーンズの曲を聴いた記憶は…

格付けなんてものに

「みのミュージック」というユーチューブが今の人に向けてロックの紹介者になっているのか。チャンネル開設者の「みの」という若者は、いかにもロックミュージシャンという容貌で、チャーとかチャボ(仲井戸麗市)とかを連想させる。話術が巧みで聞いていて…

不退転

22日に息子と田舎の実家に行き、23日に帰ってくる。 一年以上ぶりだった。22日には近く(タクシーで15分くらい)の霊園に父の納骨をする。コロナのために、亡くなって十か月後にようやくお墓に納めることができた。息子は霊園に行くのは初めてだった。僕も前…

ロックのカリスマ

三連休を目一杯使って『瘋癲老人日記』の〈ひらがな変換〉を終える。ワクチン2回目をうって丁度一週間だが、やはり身体がなんとなく怠く疲れやすく感じる。首と肩の凝りは昨日生まれて初めてフェイタスを貼ったら少しましになった気がする。 これから残りの…

フーテン

谷崎の「フーテン老人日記」の打ち込みをやっていると手が怠く頭がズキズキしてきて気を失いそうになる。結局作業中止。しばらくして、これはワクチン(2回目)の副反応ではないか、と思った。そうとでも考えないと小島信夫のときとの違いの説明がつかない…

Diary of a Mad Old Man

谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』を青空文庫でダウンロードし、それをワードにコピペし、原文のカタカナをひらがなに打ち直す作業に没頭している。 こうすることで、あの読みにくいカタカナの文章を読み易くすることができるだけでなく、単純に読むよりも文章が頭…

Voice of Spirit

昨日はワクチン2回目接種後の副反応で39.2度の熱が出て、横になりながらiPadで「三島由紀夫VS東大全共闘五十年目の真実」をアマゾンプライムビデオで見た。 あれを見て「三島由紀夫カッコ悪い」と思う人はあまりいないのではないか。逆にイキって…

Style

大阪に住んでいた子供の頃、部屋の本棚に親の本も並んでいて、その中に赤い函に入った日本文学全集があり、中高生の頃に太宰や芥川、谷崎などをそれで読んだ(今調べたら新潮社のだった)。 全巻揃っていたわけではなく、覚えているのは、上に挙げた三人のほ…

Nobody but me

週末は紀伊國屋で買った小谷野敦の谷崎潤一郎伝を読み、図書館で借りた晩年の谷崎の秘書伊吹和子『われよりほかに』も読む。小谷野は基本的に辛口批評だが谷崎のことは尊敬しているとはっきり書いているし、ほとんどのエピソードを肯定的に解釈する書きぶり…

My Emeritus

小谷野敦が千葉雅也をモデルに書いた小説(『僕のエメリタス』)というのをkindle版を買って読んだ(電子書籍『グンはバスでウプサラへ行く』に収録)。 すごく面白く読んだ。千葉雅也の小説『オーバーヒート』は明らかにこの小説の影響下で書かれているので…

神戸の祖父

母方の祖父は、僕が物心つく頃には、神戸で不動産屋(周旋屋というイメージに近い)をやっていた。そのすぐ近くの集合長屋の並びの一つみたいな家に住んでいて、年に数回母親と訪ねることがあったのだが、正確な場所は覚えていない。最寄駅は摂津本山だった…

ブレイクスルーを起こすための一つの有効な方法

何か書くことにブレイクスルーを起こすための一つの有効な方法は、こんなつまらないことわざわざ書くようなことじゃないよな、ということを書いてみることである。変身が起きる(かもしれない)。千葉雅也@masayachiba 大学三年生の頃だったと思うが、高校時…

Girls Planet

今K-POPファンの間で話題の「ガールズ・プラネット999」という番組は、日本、中国、韓国から応募したメンバーがデビューを目指してしのぎを削るという、もう供給過多状態といってもよいオーディション番組の一つなのだ。 ここに参加している日本人の中に…

「少女を埋める」は私小説か?

文学のイロハからいえば、私小説の〈私〉も作家の〈私〉とは別人格である。小説の世界を日常の世界から切断し、作品の内部で、他のひとつの人格に化身して他人の生を生きる―その試みのなかでのみ、ひとは初めて小説家でありうる(三好行雄) 先に、朝日新聞…

葛西善蔵

硫黄島の本と一緒に葛西善蔵『贋物・父の葬式』 (講談社文芸文庫)も借りてきた。 硫黄島で斃れた兵士たちも哀れだが、葛西善蔵の生涯もまた哀れである。こっちは自業自得だという人もあろうが、自分は後者を愚か者と切って捨てるような見方はできないのであ…

散るぞ悲しき

この週末に読んだ本: 『散るぞ悲しき―硫黄島総指揮官・栗林忠道』(新潮文庫)梯 久美子 『硫黄島 栗林中将の最期』 (文春新書)梯 久美子 『総員玉砕せよ!』 (講談社文庫)水木 しげる 『敗走記』(講談社文庫)水木 しげる 『十七歳の硫黄島』 (文春新書)秋草 …

いまだにブログ派(しかもtcup)

ワクチン第1回目の接種に行ったついでに本屋で千葉雅也『ツイッター哲学 別のしかたで』を買う。頭からどんどん読んでいくとあっという間に読み終えてしまいそうでつまらない。 どういう読み方がよいのだろうか。 …などと考えていたら副反応のためかあまた…

非意味的切断

千葉雅也『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』に手を出している。 ジル・ドゥルーズは一冊も読んだことがなく、いわゆる現代思想やポストモダンとかいうものにはまったく興味がないので、いきなりこの本を読んでも何が書いてあるのか…

For the sake of the Coming Idiots

千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』を読む。 勉強とは、これまでの自分の自己破壊である。 まず、自己の現状をメタに観察し、自己アイロニーと自己ユーモアの発想によって、現状に対する別の可能性を考える。 アイロニーは「決断主義」につなが…

綿矢りさは久坂葉子の生まれ変わりじゃないか?

もうこの歳になると正直なものしか読みたくない、というかウソは読みたくない。 ストーリー(物語)のある小説は、よほどの吸引力がないと、付き合うのがきつい。今回の芥川賞受賞作はどちらも、どうしても読めなかった。 映画やドラマも、よほどのモチベー…

American Journal

今は千葉雅也の『アメリカ紀行』を読んでいる。 2017年10月から2018年1月まで四カ月間ライシャワー研究所の招きでアメリカ(ボストン、ニューヨークその他)に滞在したときの記録。 当時は立命館の教授でいくつもベストセラーになるような本を出して既にその…

千葉雅也の小説は面白い

呪われたオリンピックが呪われたまま終わり、コロナの悪夢はさらに拡大し、そこに全国的な大雨被害が追い打ちをかける。アフガニスタンはバイデン大統領が米軍を撤退させるタイミングでタリバンが全土を掌握し、大統領が首都を置き去りにして逃亡した。 案の…

阪急電車

千葉雅也の小説の何がいいのかを説明するのは意外と難しい。 王道の私小説ともいえるし、今の時代だからこそ成立している小説のようにも思える。 個人的に一番やられた、と思ったのが、『オーバーヒート』の第2章、四十歳の〈僕〉が教授として勤めている大…

Dead Line Over Heat

千葉雅也『デッドライン』(第162回芥川賞候補作)、『オーバーヒート』(第165回芥川賞候補作)を読んだ。 めちゃくちゃに面白かった。その面白さについては改めて書くとして、これらの小説が芥川賞を取れないという事実は、所詮あくたがーショー(笑)が自…

メンタリズム

今朝、家にメンタリストDaiGo(メンタリストの方)の著書が二冊あったので、眼を通してみた。 似たような本がたくさんあるので、もしかしたらちがうかもしれない。 猫に元気がないと、こっちまでそうなりかねないが、自然というのはそういうものかもしれない…

三島と小島

「抱擁家族」は1971年に演劇作品化もされている。 その脚本と演出を手掛けることになった八木柊一郎が原作者の小島信夫を訪問した時の手記が残っていて興味深い。 八木は正直原作者に会うのが気が進まず、どうせ俺の小説をどんな芝居にするつもりなんだとい…

ナコ

大庭みな子の『風紋』という小説を読んだ。 最後の短編という。小島信夫が脳梗塞で倒れて危篤状態にあるという知らせを聞いて書かれた。 二人の対談などの様子から、大庭みな子が小島信夫に好感以上の思いを寄せていることは何となく分かっていたが、最後の…