文学関係
雨宮まみ「女子をこじらせて」を読んだ。 吉田豪が彼女を高く評価していて、「感受性の高さゆえにとにかく生きづらそうで、でもその危うさをちゃんと文章化できる人だった」「自分の身体を切り刻んで原稿を書いているように見えた」と書いている。 「生きる…
気になるネットニュースを目にした。 「まつもtoなかい」にゲスト出演した宇多田ヒカルが、「前川清さんにお会いしてみたい」と発言したというのだ。「母親の昔、結婚していた人。すぐ離婚しちゃたんですけど。面白いかなと思って」という。 前田清は、宇…
文藝春秋の最新号をkindle版で購入し、第169回芥川賞受賞作・市川沙央「ハンチバック」を読んだ。 受賞の決まった当日に流された記者会見の動画を見たら、著者が「当事者性が云々」という質問に答えていて、何となく敬遠しがちな思いでいたのだが、実際に読…
隅田川 乱一「穴が開いちゃったりして」(石風社、2003年) 知り合いから面白そうな本を借りたので読んでみる。 まえがきを町田康が書いている。 読書メーターの感想から転載させてもらう。 隅田川乱一は編集者、ライター、翻訳家、ミュージシャン。1951〜19…
松下竜一「ルイズ 父に貰いし名は 」(講談社文芸文庫)という本を読んだ。 著者についても本の内容についてもまったく事前知識なしに、図書館で目についたのを借りて読んだ。 正確に言えば、出鱈目に選んだわけではなかった。以前、沢木耕太郎のエッセイの中…
スライダーズの記事を書くといい感じにアクセス数が落ちて良い。 このブログは、訴えられないギリギリの線まで好き勝手なことを書くことをポリシーにしています。 なんだかもう、余りにも暑いし(これで体調不良にならない人間の方がおかしい)、日々飛び込…
小谷野敦「とちおとめのババロア」(青土社、2018)を読んだ。 「とちおとめのババロア」(『文學界』2018年3月号) 「実家が怖い」(『文學界』2018年10月号) 「五条楽園まで」(書き下ろし) 「さようならコムソモリスカヤ・プラウダ」(『文藝』2018年…
以下は、5年くらい前に書いた文章。 このときにはもう映画化は決まっていたのかな。 もっとも映画自体はこの本の内容とはほとんど関係ないらしいが。 * * * この1年のうちに、日本で一番売れた本が、この吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』だという…
ちょっとほかに読むものがたくさんあって間隔があいたが小島信夫「小説作法」(中公文庫、2023年4月)のつづきを電車の中で読んでいた。 ドストエフスキーの「悪霊」について語っている部分は面白く読んだが、自分があまり関心のない話題(ドガや戯曲やカフ…
ある晩、象は象小屋で、ふらふら倒れて地べたに座り、藁もたべずに、十一日の月を見て、「もう、さようなら、サンタマリア。」と斯う言った。「おや、何だって? さよならだ?」月が俄かに象に訊く。「ええ、さよならです。サンタマリア。」 宮沢賢治「オツ…
私はしばしばおもったものだ「尾形亀之助は私一人のために存在した詩人ではないだろうか」と、またしばしば思ったものだ「私のような読者が確かにいることは尾形亀之助にとって名誉なことではないか」と。 辻まこと「尾形亀之助」(「尾形亀之助全集付録資料…
地平線をたどって 一列の楽隊が ぐずぐず していた そのために 三日もつづいて雨降りだ 「雨降り」尾形亀之助 吉田 美和子「単独者のあくび 尾形亀之助」(木犀社、2010年) 読み始めたが、これは面白い。先に正津勉「小説 尾形亀之助」(河出書房新社、2007…
鶴見俊輔の時代区分に倣って言えば日本の戦争は1931年の日中戦争から1945年の敗戦まで一つながりだったので、2031年を新しい戦争の始まりとしたら今は1923年(大正12年)に相当する。 1923年(大正12年)といえば、尾形亀之助が本郷白山上から新宿上落合に転…
「消費は生産を二重に生産する。」マルクスは「経済学批判序説」で書いている。 「つまり、消費においてはじめて生産物は現実的な生産物になるのだから。たとえば衣服は、着るという行為によってはじめて実際に衣服になる。…だから生産物は、消費においては…
「小説 尾形亀之助―窮死詩人伝」(正津勉著、河出書房新社、2007年) たいへん面白い。資料に乏しく謎に包まれた尾形亀之助の生涯について、細かな事実が丹念に調べられ、生き生きと描写されている。 亀之助がその直中に飛び込んだ、革命後ロシアの未来派(…
国会図書館デジタルコレクションで読める昔の雑誌より、戦前のボヘミアン詩人尾形亀之助(おがた かめのすけ、1900 - 1942)のエピソードを拾って、ウィキペディアの略歴に挿入。なので不正確なところは多々あるやしれず、個人的な備忘録なので適宜修正して…
「あまちゃん」再々放送を見ていると、「岩手こっちゃこいテレビ」のディレクターの人が菊地成孔に、太巻プロデューサーが大谷能生に見えて仕方がないのは自分だけだろうか・・・ 国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで「海女さん」の写真集を…
natalie.mu 宮藤官九郎が企画・監督・脚本で山本周五郎の小説「季節のない街」を連続ドラマ化。全10話が8月9日にディズニープラスで一挙独占配信されることがわかった。宮藤の監督作は2016年の映画「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」以来7年ぶりとなる。 原…
田邊園子「伝説の編集者 坂本一亀とその時代 」(河出文庫、2018年)を読む。 戦後、河出書房の編集者としてさまざまな作家たちを世に出した伝説の人物の評伝。 裏方に徹した人生のため、その役割の大きさに比して知名度は高くない。 あの坂本龍一の父親とい…
新刊で出たばかりの小島信夫「小説作法」(中公文庫、2023年4月)を買う。 最近は小島信夫はまったく読まなくなった。というより、読むのが嫌だった。その理由はのちに述べるが、2年くらい前に小島信夫の虜になっていた頃は、手に入る限りの小島の小説をす…
最近はThe Street Slidersばかり聴いている。「スライダーズの魅力の80%はハリーで残り10%が蘭丸、10%がジェームスとズズかな」と思って、「いや80%は言い過ぎか。ハリーだけなら『狼煙』になっちゃうからな。あれはあれでいいんだが、とてもメ…
吉田豪がどこかで絶賛してたのを思い出したので、立ち寄ったブックオフで見つけた永沢光雄「AV女優」(文春文庫、1999年)を買って今読んでいる。 全然予備知識がなく、AV女優を取材して書かれた「現代社会の光と闇」を暴く系の社会派ルポタージュかと思って…
わたしは洋子の熱心なすすめにもかかわらず、「野菜の会」の会員になるのをことわった。熱心な布教師のアヤコさんや洋子は、自分にも家族にも他人にも人類にも役に立つことをしているから打ちこめるのである。役に立つことをしているという「生き甲斐」も、…
別冊宝島Real 17「腐っても『文学』!?―作家が知事になり、タレントが作家になる時代のブンガク論」(大月隆寛 監修、2001年)を図書館で借りる。 なぜこんなカビの生えたような、内容的には完全に死文化していると思われる本に手が伸びたかというと、 「好き…
真面目に語ろう。それもお笑い種だ。人間どもってやつは、自分が何をほざいているかも定かではない。目はうつろ、街中を彷徨し、徘徊する、魂のぬけたクソどもだ。生きる理由などありはしない、かといって死ぬ理由もない。俺たちに残された、生に対する軽蔑…
明け方に目覚めて眠れないので、某文学系ユーチューバーの大江健三郎追悼トークを聴いていたら、その人のおすすめ作品ナンバーワンは『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』で、『個人的な体験』はピンと来ないと言っていて、感性は読者によりそれぞれ違う…
最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」読了。 小説新潮2007年11月号掲載の最相葉月と新井素子の対談と、最相葉月の著書「仕事の手帳」に収録されている、星新一の評伝を書いたときのエピソードを綴った文章も併せて読んだ。 星新一と言えば中高生が一度…
この週末は、 最相葉月「セラピスト」読む。 最相葉月「星新一 一〇〇一話をつくった人」もう少しで読み切るというところで力尽きる。 感想は改めて。
近代に於ける誠実な文章は「完全なる自己否定」でしかなし得ない、と僕は信じている。書き手が自己否定していない文章など、まったく読むに値しない。勝手に自分だけで読んで楽しんでくれ、という感想しか持ちえないのだ。そういう何の役にも立たない文ばか…
今販売中の『文藝春秋』に掲載されている芥川賞受賞作、井戸川射子『この世の喜びよ』、佐藤厚志『荒地の家族』を読んでみた。 読んでみた、といっても、きちんと読んだわけではなく、流し読み程度なので、ちゃんとした感想は書けない。何度も読み返せば、違…