War Is Over

 if you want it

文学関係

夜空が暗いのは?

とうとう読みたい小説がなくなってしまった。 去年(2021年)の初め頃から、自宅にあった大江健三郎(妻の所有本)をきっかけにそれまで無縁だった〈純文学の世界〉にハマることを試みて、西村賢太の私小説の面白さにぶつかって、そこから川崎長太郎とか田中…

リアリズム廖

小谷野敦が藤堂志津子を論じた「藤堂志津子と日本のリアリズム」を読んで、なるほどと思った。日本の純文学(通俗小説は言うに及ばず)が抱きがちな恋愛幻想みたいなものがない、女の側から恋愛のリアリズムを衒いなく描いているという点を評価している。 他…

暑中残影

藤堂志津子「マドンナのごとく」を読む。1987年、札幌市の広告代理店に在籍中に書いた小説で、第21回北海道新聞文学賞を受賞(熊谷政江名義)。1988年、第99回直木三十五賞候補(翌年「熟れてゆく夏」で第100回直木三十五賞を受賞)。 例によって例のごとく…

川端康成初恋小説集(新潮文庫)

「川端康成初恋小説集」(新潮文庫)を買う。 『川端康成の運命のひと 伊藤初代:「非常」事件の真相』(森本穫、ミネルヴァ書房)を読んで、初代とのことについて書かれたアンソロジーがあれば読みたい、と思っていたら、丁度お誂え向きのがあった。 ネット…

はつよとやすなり(つづき)

昨日の記事のつづき。 川端は、初代からの掌返しの手紙に傷つき、別れを受け入れたが、その後も初代のことを相当引き摺っている。 初代の何がよかったのか。一つには、17,8歳以上の女性には興味が持てなかったという幼女趣味に加え、初代の勝気なところ…

『川端康成の運命のひと 伊藤初代:「非常」事件の真相』

『川端康成の運命のひと 伊藤初代:「非常」事件の真相』(森本穫、ミネルヴァ書房)という本を借りて読む。今年(2022年)4月に出たばかりの本。 手に取ったきっかけは、このブログにも書いた川端康成の「文芸時評」がとても面白く、ネットで川端について調…

Past Lovers

佐藤泰史の評伝を読んで、彼が熱心にアプローチしたという藤堂志津子の小説を読みたくなり、『別ればなし』と『昔の恋人』を借りて読んだ。 『別ればなし』は初出が「イン・ポケット」1998年8月号~10月号、講談社文庫の発売日が2002年6月14日。『昔の恋人』…

川端康成「文芸時評」

川端康成「文芸時評」から面白いとこを抜粋する。だが、この時評の面白さを真に味わうためには、全文を読む必要があるので、抜粋では伝わらないものが多い。それでも記録しておくのは、(何時になるか分からぬが)のちに読み返すときの指標とするためである…

Yellow or Not Yellow

砂川文次「99のブループリント」(230枚)目当てで借りた「文学界」2022年3月号に掲載されていた他の小説、加納愛子「黄色いか黄色くないか」(130枚)、戌井昭人「田舎のサイケ野郎」(110枚)も読んでみた。 どちらも面白く読めた。週末のひとときに自室で…

芥川賞と西村賢太

第167回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が20日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は高瀬隼子(じゅんこ)さん(34)の「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)、直木賞は窪美澄さん(56)の「夜に星を放つ…

ざるうどん

佐藤泰志の評伝に出てくる藤堂志津子のインタビューが魅力的だったので、図書館に彼女の本を探しにゆき、文庫本で唯一在架だった『別ればなし』という小説を借りて読む。 面白かった。どろどろした修羅場が続く内容なのに、文体がサバサバしていて湿っぽい陰…

『狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅』

『狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅』(中澤雄大著、中央公論新社、2022年4月)を読んだ。 完成まで十一年余りの年月を要したという、六百頁に及ぶ力作評伝。 妻・喜美子さんから預かった生前の大量の書簡を精読した成果が十分に活用されているだけでなく、ご遺族…

文壇栄華挽歌物語

大村彦次郎「文壇栄華物語」と「文壇挽歌物語」を読む。 編集者の目から見た戦中戦後昭和文壇史の舞台裏。とても面白く読めた。 物語全体の支柱になっている人物の一人が和田芳恵であるというのがいい。 解説を坪内祐三が書いていて、あとがきにもちょっと出…

Carnage and Innocence

週刊読書人の、佐藤泰志の評伝『狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅』を書いた中澤雄大と佐伯一麦の対談を読んだ。 去年、佐藤泰志の小説や関連本をいろいろと読んでいるときに、中澤氏が十年以上この本の執筆に取り組んでいると書いているのを読み、完成を待ち遠しく…

No Man's Literature Museum

購入。刊行に尽力された「本の雑誌」社杉江由次氏のコラムによると、連載元である「小説現代」の講談社では本にする予定はないと言われ、すぐさま単行本化することに決めたという。 そしてなんと、図書館に行き、掲載誌を全回分コピーすると、ご自分で一文字…

天狗

来週発売の西村賢太『誰もいない文学館』 www.webdoku.jp の予習として、国立国会図書館のデジタルライブラリーで 大坪砂男『閑雅な殺人』を開いて、 「天狗」という短編を読んでみたら、とんでもなかった。 この週末は、これでもうおなかいっぱいだ。

清水信「作家と女性の間」

国会図書館デジタルライブラリーで読めるようになった本の中に、清水信「作家と女性の間」(現文社、昭和42年)というのがあって、中々面白かった。 先ほど完結した『田中英光全集』十一巻(芳賀書店刊)に対して、私は文句を言った。初めての全集で、もちろ…

Demon in Roxi

数日前の記事に書いた中尾拓哉『マルセル・デュシャンとチェス』を借りてみた。四次元についての章では、二十世紀初頭の〈四次元ブーム〉とキュビズムの関連のようなことが書かれていて、「思考の新紀元」を書いたC.H.ヒントンや四次元立方体の図を描いたク…

憤怒の章

何だか西村賢太のためのブログみたいになってきたが、今日は『一私小説書きの日乗 憤怒の章 』(角川文庫)を買った。 ページ数は第一巻の方が多いのに、そっちは660円(税別)でこっちは1000円以上するのはどうしてだろう。何の便乗値上げだ。もう賢太のた…

デジタル宝船

今日は一日国会図書館デジタルコレクションに没頭。 とりあえずチェックだけして後でゆっくり読もうと思うのだが(たぶん一生かけても読み切れそうにない)、ついつい読み耽ってしまう。そしてやはりPCの画面上では読みづらい。昨日はタブレットでも読んでみ…

国会図書館デジタルコレクション

昨日に引き続き、国会図書館デジタルコレクションで読める絶版本。詳しい人ならいくらでも探せそう。学術機関関係者ではない自分みたいな人にとっては本当にありがたい。 浅見淵『現代作家研究』『昭和文壇側面史』 尾崎一雄作品集第1巻~第10巻 外村繁『…

国会図書館革命

「本の雑誌」西村賢太追悼号の「北町貫多クロニクル」を見ながら、以前自分で作った時系列メモを修正する。手元にすべての本がないので、よく分からないところはそのままにする。 砂川文次「小隊」(文春文庫)を読了。三篇収録されているが、発表順に「市街…

文学とは縋りつくもの

「本の雑誌」2022年6月号に掲載されている「藤澤清造全集内容見本」を眺めて、改めて賢太の藤沢清造に対する尋常ならざる思いの深さに圧倒された。 内容見本に寄せた文章(「藤澤清造全集』編集にあたって)の中で「この全集さえ完結出来たら、もう、あとは…

庄野潤三と小島信夫

庄野潤三の『貝がらと海の音』などを読むと、これこそが「うるわしき日々」だよなあ、という感じがする。現実に存在する『うるわしき日々』という小島信夫の小説は、言葉の通常の意味において、タイトルと中身に著しいギャップがあると言わざるを得ない。 老…

小隊

田中小実昌の自伝を読んでいるが、平和ボケした自分には想像もつかない体験が次々にあの調子で描かれているのだが、十代から二十代にかけて戦場を体験した人たちも凄いが、就職氷河期以降の若い世代の社会からの追い詰められ方にもまた違ったキツさと切実さ…

ガンビア滞在記感想

庄野潤三『ガンビア滞在記』は、ロックフェラー財団の援助留学生(?)として妻と共にオハイオ州コロンバスの郊外にあるガンビアという村で一年足らずを過ごした作家の滞在記である。庄野が現地で交流した隣人の大学教授夫妻や学生、料理屋や理髪店の店主や…

ガンビア滞在記

庄野潤三をまとめて読みたくなり、近所の図書館にあるだけの本を借りてきた。 「新潮現代文学40」には「浮き燈台」「流れ藻」「ガンビア滞在記」の三篇が収録されている。 「貝がらと海の音」は1995年1月~12月(74歳のとき)にかけて「新潮45」に連載さ…

神秘と宗教はちがう

田中小実昌「エッセイ・コレクションⅠひと」(筑摩書房)の中の、「神秘と宗教はちがう」というエッセイが面白かった。田中小実昌については、酒飲みのタコ八郎に似たおじさん、というくらいの印象しかなかったが、小島信夫や後藤明生と親しかったというので…

庄野潤三

「私小説名作編」のアンソロジーを読んで気になった庄野潤三「静物」を読むために図書館へ行き現代日本文学大系88(筑摩書房)を借りる。田中小実昌のエッセイ集も二冊借りる。「静物」を読み、村上春樹の解説を読んで納得する。 「第三の新人」として庄野…

私小説名作選(下)

私は本来、普遍性というものは、個の体験という錨を深く垂らすことで、その錨が地底についたとき、個の独自性というものが普遍性というものに転化すると思っている。 サワダオサム「わが上林暁―上林暁との対話」より <下巻> 藤枝静男 「私々小説」 家族(…