INSTANT KARMA

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2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

猛暑危言

統一教会と自民党議員のつながりについてマスコミやネットが報じているが、いつまで続くだろうか。いつの間にか沈静化して、何となく自民党(あるいは政治家全般)へのグレーなイメージだけが残り、致命傷には至らない、つまり政権与党の地位を揺るがす程の…

川端康成初恋小説集(新潮文庫)

「川端康成初恋小説集」(新潮文庫)を買う。 『川端康成の運命のひと 伊藤初代:「非常」事件の真相』(森本穫、ミネルヴァ書房)を読んで、初代とのことについて書かれたアンソロジーがあれば読みたい、と思っていたら、丁度お誂え向きのがあった。 ネット…

はつよとやすなり(つづき)

昨日の記事のつづき。 川端は、初代からの掌返しの手紙に傷つき、別れを受け入れたが、その後も初代のことを相当引き摺っている。 初代の何がよかったのか。一つには、17,8歳以上の女性には興味が持てなかったという幼女趣味に加え、初代の勝気なところ…

『川端康成の運命のひと 伊藤初代:「非常」事件の真相』

『川端康成の運命のひと 伊藤初代:「非常」事件の真相』(森本穫、ミネルヴァ書房)という本を借りて読む。今年(2022年)4月に出たばかりの本。 手に取ったきっかけは、このブログにも書いた川端康成の「文芸時評」がとても面白く、ネットで川端について調…

やまたつ

あーなんでこんなやつ (はー)思ったときもある でも 夢見る2人目指す“まりやとやまたつ” 清水翔太「Lazy feat. ASOBOiSM, Kouichi Arakawa」 「西村賢太お別れ会」で爆上がりしたアクセス数(とはいえせいぜい数百レベルだが)がいい感じに下がって来たので…

Water seeks its own level...

徳田秋声「あらくれ」の一節を読んで、わずかな言葉で人間の性質を見事に捉えているのに感心する。たとえばお島についての次の描写。 「あらくれ」(四十一)の冒頭 一つは人に媚びるため、働かずにはいられないように癖つけられて来たお島は、一年たらずの…

Past Lovers

佐藤泰史の評伝を読んで、彼が熱心にアプローチしたという藤堂志津子の小説を読みたくなり、『別ればなし』と『昔の恋人』を借りて読んだ。 『別ればなし』は初出が「イン・ポケット」1998年8月号~10月号、講談社文庫の発売日が2002年6月14日。『昔の恋人』…

川端康成「文芸時評」

川端康成「文芸時評」から面白いとこを抜粋する。だが、この時評の面白さを真に味わうためには、全文を読む必要があるので、抜粋では伝わらないものが多い。それでも記録しておくのは、(何時になるか分からぬが)のちに読み返すときの指標とするためである…

Yellow or Not Yellow

砂川文次「99のブループリント」(230枚)目当てで借りた「文学界」2022年3月号に掲載されていた他の小説、加納愛子「黄色いか黄色くないか」(130枚)、戌井昭人「田舎のサイケ野郎」(110枚)も読んでみた。 どちらも面白く読めた。週末のひとときに自室で…

西村賢太追悼文集を読んで

『西村賢太追悼文集』(COTOGOTOBOOKS)を読了。 賢太とは面識のない愛読者から付き合いのあった編集者、同業者まで、送られたもの全部載せました(既出の追悼文の転載もあり)という感じなのでゴッタ煮感があるが、それが編集の狙いで、「色んな人が好き好…

Requiem for K

「西村賢太追悼文集」(COTOGOTOBOOKS)が届いた。 これを読み終えたら、いよいよ賢太とのお別れに一段落つくような気がして、なかなか本を開けないでいる。 明日の朝までに読み終えることができるだろうか。

芥川賞と西村賢太

第167回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が20日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は高瀬隼子(じゅんこ)さん(34)の「おいしいごはんが食べられますように」(群像1月号)、直木賞は窪美澄さん(56)の「夜に星を放つ…

ざるうどん

佐藤泰志の評伝に出てくる藤堂志津子のインタビューが魅力的だったので、図書館に彼女の本を探しにゆき、文庫本で唯一在架だった『別ればなし』という小説を借りて読む。 面白かった。どろどろした修羅場が続く内容なのに、文体がサバサバしていて湿っぽい陰…

Drive

「週刊読書人」に西村賢太「雨滴は続く」の書評(豊崎由美と長瀬海の対談)が載っているというので買って読んでみた。 豊崎由美は西村の小説を早くから評価している人で、西村自身も何度も作品の中で言及している<西村賢太読みのスペシャリスト>である。今…

『狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅』

『狂伝 佐藤泰志-無垢と修羅』(中澤雄大著、中央公論新社、2022年4月)を読んだ。 完成まで十一年余りの年月を要したという、六百頁に及ぶ力作評伝。 妻・喜美子さんから預かった生前の大量の書簡を精読した成果が十分に活用されているだけでなく、ご遺族…

西村賢太年譜(「日乗」以前)

芥川賞を取って以降の生活は「一私小説書きの日乗」で(一部改変もあるとはいえ)作家自身により明らかにされているので、それ以前の年譜を作成してみた。限られた資料に基づくため、もちろん正確でない部分もあろうし、私小説の内容に基づく記載はフィクシ…

西村賢太著作一覧

西村賢太名義(編著含む)の著作を年代順に並べてみた。追悼集も入れた。 右横に数字を付したのは単著の発行順番。<一私小説家書きの日乗>に、見本が届いた日には必ず「・・冊目となる単著」と書かれているので、その数字に合わせた。発刊は2011年以降は<…

西村賢太小説作品(発表順)

北町貫多の私小説の舞台を時系列に並べたものとは別に、西村賢太の私小説を執筆(発表)された順番で並べたものを作ってみた。 赤字は<秋恵もの>。右の数字は<日乗>に書かれていた枚数。 1室戸岬へ(『田中英光私研究』第七輯1995年11月)単行本未収録 2…

続・西村賢太さんを偲ぶの記

昨日の記事にツイッターで言及して下すったかたがいて、けっこう見られたようなので、お別れの会で撮った写真をまたアップします。 もっと撮ればよかったな、と思いつつ、きっとそのうちどこかの記念館に展示されることになるに違いない、と思うので、そのと…

西村賢太さんを偲ぶの記

昨日のお別れ会に出席できなかったかたがたのために、配付された小冊子に載っていた貴重な写真をアップしておく。このブログの読者数なぞたがかしれているのでほぼ意味のない行為ではあるが。 ちなみに、2002年(平成14年)35歳の時に七尾図書館で講演した時…

Farewell My Dear

朝信号待ちをしていると立て続けに青い護送車が二台目の前を通り過ぎた。 今日はメルパルク・ホテルで西村賢太献花のお別れの会があるので行こうかどうしようか直前まで迷っていたが、阿部公彦教授のツイートでゆかりの品も展示されるというのを見、「ビバリ…

Yellowed Handwriting

黄ばんだ手蹟(『文學界』2018年1月号) 「陋劣夜曲」(『群像』2018年1月号)の下書きを終えた2017年11月21日の深夜の場面から始まる。ほっとして部屋にある清造の額を眺めていると、18年ほど前に作った扁額の中の書簡がずり落ちてしまっているのに気づく。…

REQUIEM POUR UN A…

最悪なことが起こった。安倍晋三に好意的な人も批判的な人も、支持する人も反対する人も、双方の側にとって、最も望ましくないかたちで彼の人生が終った。 良くも悪くも(何が”良く”なのかぼくには全く理解できないけれども)日本の「失われた三十年」を象徴…

文壇栄華挽歌物語

大村彦次郎「文壇栄華物語」と「文壇挽歌物語」を読む。 編集者の目から見た戦中戦後昭和文壇史の舞台裏。とても面白く読めた。 物語全体の支柱になっている人物の一人が和田芳恵であるというのがいい。 解説を坪内祐三が書いていて、あとがきにもちょっと出…

Photographs

このところ自分でも意味の分からないままに熱中していた、西村賢太の日記(一私小説書きの日乗シリーズ)の抜粋を打ち込むという作業をようやく一通り終える。この間も毎日西村賢太についてブログに記事を書いており、ほとんど「寝ても賢太、覚めても賢太」…

なぜ藤澤清造なのか?

やがて彼は帰って来た。……五百枚にあまるその作を大切に抱えて…… われわれはほとほとその努力に感心した。…ということは、何のあてもなく、かれはその作を書いたのである。どこに掲載してもらえるあても、どこで出版してもらえるあてもなしにかれはその長編…

「野狐忌」2

1993年に西村が参加した田中英光展を主催したという「いわゆる無頼派作家の研究サークル」というのは、1990年に朝日書林から「仮面の異端者たち : 無頼派の文学と作家たち」という本を出版している「無頼文学研究会」という団体のことではないか。但しこの催…

「野狐忌」

西村賢太「田中英光私研究 第八輯」に収録された小説「野狐忌」は、今振り返ると、西村の生涯の一つの時期が終わる直前に書かれた、文字通り記念碑的な作品といえる。 この小説で最も重要な部分は、最初のほうにさりげなく書かれた箇所で、西村はたぶんその…

「室戸岬へ」3

もう一度問うてみる。西村賢太にとって田中英光とは何だったのか。 中学生のころからマニアックな探偵小説を読み耽り、いずれ小説家になりたいとの思いをふとこっていた少年が、田中英光の小説と出会って、異常な衝撃を受け、「ぼくの人生観は変わった」とま…

「室戸岬へ」2

私小説である以上、主人公の今の境遇というものが大切な問題になってくる。 <ぼく>は、高知で最初の夜に入った居酒屋で、偶々一緒になった客から仕事について尋ねられ、東京の神田で古本屋をやっていると答える。小説の初版本を売って食っているが、店はな…