INSTANT KARMA

We All Shine On

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

大きなクジラ

『疒の歌』の解説だけ先に読む。 映画「苦役列車」の監督・山下敦弘が書いている。西村賢太の死後に書かれたもの。 「苦役列車」はいうまでもなく芥川賞受賞作で、西村の最も有名な作品である。 しかし前にも書いたように、ぼくはこの小説をあまり高く評価し…

祀り

西村賢太が終わらない。終わらせてくれない。 今日発売の「ヤマイダレの歌」(新潮文庫)を買う。 その前に読まないといけないものが色々ある。 「日乗」シリーズの詳細な分析も自分のためのメモとしてこれからやるつもり。 本格的な西村賢太研究書が出る前…

Demon in Roxi

数日前の記事に書いた中尾拓哉『マルセル・デュシャンとチェス』を借りてみた。四次元についての章では、二十世紀初頭の〈四次元ブーム〉とキュビズムの関連のようなことが書かれていて、「思考の新紀元」を書いたC.H.ヒントンや四次元立方体の図を描いたク…

Raindrops keep fallin'

西村賢太「雨滴は続く」一度目読了。 読み終えるのが勿体ないと思いつつ、頁を繰る手が止められなかった。 これが西村賢太文学の到達点、と思った。 北町貫多(西村賢太)が2004年(平成16年)7月に同人「煉瓦」に発表した小説「けがれなき酒のへど」が同年1…

NFT Tobis

ちょっと前にマドンナのNFTアート(女性器から樹が生えたり蝶々が出てくるやつ)が話題になっていたが、特に下品とも過激だとも思わない。普通にいい作品だと思う。そもそもNFTというのがよく分からない。デジタルデータをコピペできないように制限をかけて…

冗談半分愚痴半分

河瀨直美監督がまた文春でやられたみたいだなあ。藤井風はとんだ巻き込み事故だよなあ。まあこれをきっかけに見つめ直せるかどうか。ちょっとした風邪で済めばいい。 水道橋博士は、馬鹿でも悪い人でもないと思うんだがなあ。著書は基本的に好きだし。インボ…

憤怒の章

何だか西村賢太のためのブログみたいになってきたが、今日は『一私小説書きの日乗 憤怒の章 』(角川文庫)を買った。 ページ数は第一巻の方が多いのに、そっちは660円(税別)でこっちは1000円以上するのはどうしてだろう。何の便乗値上げだ。もう賢太のた…

Tears

今日は一日出張で疲れた。体力の衰えを感じる。それでもまだまがりなりにも半日歩き回れるだけマシだろう。あと十年もしたらどうなるのか。 出張先で西村賢太『一私小説書きの日乗』(角川文庫)買う。 昨日は移動中に読むために『形影相弔・歪んだ忌日』(…

『雨滴は続く』

5月25日発売と予告されていた西村賢太の新刊『雨滴は続く』が、都心の書店ではもう並んでいるとの情報を文藝春秋社のツイッターで目にし、早速仕事帰りに新宿の紀伊國屋書店で購める。 昨日の文庫といい、いいタイミングで賢太の本が手に入るのはうれしい。 …

賢太か鶴か

図書館で借りてきた「文學界」2021年11月号掲載の西村賢太「蝙蝠か燕か」を読み返す。 ユニクロにブリーフと靴下を買いに行った帰りに駅前の本屋に寄り、西村賢太「どうで死ぬ身の一踊り」(角川文庫)が復刊されていたのを見つけたので買う。 過去に何度か…

デジタル宝船

今日は一日国会図書館デジタルコレクションに没頭。 とりあえずチェックだけして後でゆっくり読もうと思うのだが(たぶん一生かけても読み切れそうにない)、ついつい読み耽ってしまう。そしてやはりPCの画面上では読みづらい。昨日はタブレットでも読んでみ…

国会図書館デジタルコレクション

昨日に引き続き、国会図書館デジタルコレクションで読める絶版本。詳しい人ならいくらでも探せそう。学術機関関係者ではない自分みたいな人にとっては本当にありがたい。 浅見淵『現代作家研究』『昭和文壇側面史』 尾崎一雄作品集第1巻~第10巻 外村繁『…

国会図書館革命

「本の雑誌」西村賢太追悼号の「北町貫多クロニクル」を見ながら、以前自分で作った時系列メモを修正する。手元にすべての本がないので、よく分からないところはそのままにする。 砂川文次「小隊」(文春文庫)を読了。三篇収録されているが、発表順に「市街…

あっちの話(2)

今朝NHK・BSのワールドニュースで、アメリカの議会でUFO問題が真剣に討議されたと報じられていた(まったくどうでもいい話だが、僕はこの番組の高橋彩というキャスターを見るのを、かつて国谷裕子さんを見ていたように朝の楽しみにしている)。僕はアメリカ…

私小説とケンドリックとトール

もう日本は経済的に大きく浮上することはなく、ジリ貧に陥る一方と思われるので、これからは経済的な豊かさ以外のことに主な喜びを見出していくしかない。そんな時代にあって、貧困や苦しみの中で何気ない日常生活に生きる歓びを見出すことの価値を教えてく…

とりとめのないぼやき

朝検査結果を聴きに行った妻から九時半に携帯に電話が来て、子宮内膜増殖で悪性ではなかったので、経過観察を続けていくという。貧血の薬(鉄)とホルモンバランスの薬を飲み続ける。今日は内科のクリニックで高血圧の薬をもらいに行くという。休みを取って…

日乗鬼語

近所の図書館で「風来鬼語 西村賢太対談集3」と「一私小説書きの日乗 不屈の章」を借りる。 藤野可織との対談の中で、「暗渠の宿」の中で三島賞がらみで現存のある老大家をディスってる部分があって、その原稿を見た矢野編集長に削除するよう示唆されたが、…

文学とは縋りつくもの

「本の雑誌」2022年6月号に掲載されている「藤澤清造全集内容見本」を眺めて、改めて賢太の藤沢清造に対する尋常ならざる思いの深さに圧倒された。 内容見本に寄せた文章(「藤澤清造全集』編集にあたって)の中で「この全集さえ完結出来たら、もう、あとは…

結句、西村賢太

「本の雑誌」2022年6月号は、「特集 結句、西村賢太」という永久保存版。 ツイッターで発売を知り、本屋に走る。焦りすぎて売り場で少し迷って購入。分厚い。いつもの倍くらいページが多い気がする。 冒頭に「藤澤清造全集内容見本全掲載」がきて、いきなり…

AはAのA

もう十年以上前、ある資格試験の受験が終わって合格発表まで時間ができたタイミングで、それまで長年の懸案事項だった、肛門科の診療所を訪ねた。 若い頃から肛門の形が変だなと思っていて、鏡で見たら、通常は穴の周りに皺があるのが普通なのに、腸の先端が…

庄野潤三と小島信夫

庄野潤三の『貝がらと海の音』などを読むと、これこそが「うるわしき日々」だよなあ、という感じがする。現実に存在する『うるわしき日々』という小島信夫の小説は、言葉の通常の意味において、タイトルと中身に著しいギャップがあると言わざるを得ない。 老…

小隊

田中小実昌の自伝を読んでいるが、平和ボケした自分には想像もつかない体験が次々にあの調子で描かれているのだが、十代から二十代にかけて戦場を体験した人たちも凄いが、就職氷河期以降の若い世代の社会からの追い詰められ方にもまた違ったキツさと切実さ…

I Want You

Man, no wonder our lives is caught up in the daily superstition that the world is bout to end 世界がもうすぐ終わるっていう迷信に日々俺たちが囚われるのも無理ないよな Kendrick Lamar - A.D.H.D. ケンドリック・ラマ―Kendrick Lamarの新曲がマーヴ…

ガンビア滞在記感想

庄野潤三『ガンビア滞在記』は、ロックフェラー財団の援助留学生(?)として妻と共にオハイオ州コロンバスの郊外にあるガンビアという村で一年足らずを過ごした作家の滞在記である。庄野が現地で交流した隣人の大学教授夫妻や学生、料理屋や理髪店の店主や…

第80期名人戦七番勝負第3局

挑戦者の斎藤慎太郎八段(29)が繰り出した渾身(こんしん)の勝負手、△2五桂が渡辺明名人(38)の読み違いを誘い、劣勢に立たされていた斎藤が逆転勝利をもぎ取った。(毎日新聞) 斎藤慎太郎八段は、過去のブログにも書いたが、七段時代に詰将棋教室で色紙…

ガンビア滞在記

庄野潤三をまとめて読みたくなり、近所の図書館にあるだけの本を借りてきた。 「新潮現代文学40」には「浮き燈台」「流れ藻」「ガンビア滞在記」の三篇が収録されている。 「貝がらと海の音」は1995年1月~12月(74歳のとき)にかけて「新潮45」に連載さ…

神秘と宗教はちがう

田中小実昌「エッセイ・コレクションⅠひと」(筑摩書房)の中の、「神秘と宗教はちがう」というエッセイが面白かった。田中小実昌については、酒飲みのタコ八郎に似たおじさん、というくらいの印象しかなかったが、小島信夫や後藤明生と親しかったというので…

庄野潤三

「私小説名作編」のアンソロジーを読んで気になった庄野潤三「静物」を読むために図書館へ行き現代日本文学大系88(筑摩書房)を借りる。田中小実昌のエッセイ集も二冊借りる。「静物」を読み、村上春樹の解説を読んで納得する。 「第三の新人」として庄野…

私小説名作選(下)

私は本来、普遍性というものは、個の体験という錨を深く垂らすことで、その錨が地底についたとき、個の独自性というものが普遍性というものに転化すると思っている。 サワダオサム「わが上林暁―上林暁との対話」より <下巻> 藤枝静男 「私々小説」 家族(…

私小説名作選(上)

中村光夫編「私小説名作選」(上下巻、講談社文芸文庫)を読んだ。 せっかくなので感想を記したいが、「名作選」との言葉通りいずれも文壇の大家による名品ばかりなので、作品の客観的な価値とは無関係に、あくまでも今の自分がどう感じたかというに過ぎない…