INSTANT KARMA

We All Shine On

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

No Knockin' On Heaven's Door

戸田学『上岡龍太郎 話芸一代』(青土社、2013年)を読んだ。 上岡龍太郎を初めて見たのは「ノックは無用」か何かのトーク番組だった。 えげつない下ネタ(ラブホテルに連れて行った女に仰向けになった顔の上を跨がせるというような)を涼しい顔で冷静な口調…

大三

宇多田ヒカルさんが「寂しさや辛さは、乗り越えなければならない山ではない。それも一つの心象風景だ」と言っていたが、本当にそうだなと感じる。無理に寂しさを埋める必要はないし、辛いことを無理に解決する必要もない。そこに善悪も存在しない。『ただそ…

陳腐なる浮世

きたるべきその時に備えていたら~、きたるべきその時が来ませんでした~。チクショー!! #まいにちチクショー — コウメ太夫 (@dayukoume) 2022年8月28日 実に五年ぶりにスーパー銭湯へゆく。以前のカードはもう利用不可で、新しく会員証を作った。水着をつ…

お笑い帝国盛衰記

エムカク「明石家さんまヒストリー2」を買いに新宿の大型書店に行ったら在庫切れだった。仕方がないので電子書籍を購入。 「ヒストリー2」は東京で人気者になった後の話なので、「1」ほど興味深い話は少ない。「ひょうきん族」は、それまで毎週見ていたド…

頼れるAceはUnderthrow

エムカク氏の「明石家さんまヒストリー」を読んでいて、子供時代を大阪で過ごした自分がリアルタイムで見ていたさんまのことを思い出していた。 記憶に残っているのは、なんば花月かどこかの演芸中継番組で漫談をやっているのをテレビで見たのがたぶん一番古…

山田順三年譜

1975年(昭和50年) 4月10日、兵庫県で出生。出身は同県三木市緑が丘町。三人兄弟の二男で、兄と弟がいた。父は地方公務員で神戸税関に勤務。他の子供が見ているようなTV番組を見たりゲームするのを禁じられるなど、厳格な躾の下で育つ。 1980年(昭和55年)…

L'histoire de Samma Akashiya Ⅰ

昨日偶々寄ったブックオフでエムカク「明石家さんまヒストリー1」を買う。水道橋博士のメルマガに連載されていたのを以前読んでいた。昔のメルマガをメールボックスから取り出して再読すると、書籍化されたのは膨大な連載記事で綴られた年表の一部でしかな…

ブライアン・ウィルソン自伝

「ブライアン・ウィルソン自伝」の原書をkindleで購入し、邦訳書も読んでいる。 マイケル・ジャクソン「ムーンウォーク」やマーヴィン・ゲイの伝記のときにも書いたように、洋楽ミュージシャンの伝記のたぐいには邦訳に問題がある場合が多く、原書に照らすと…

ああ言えば、キャンドル

「街録ch」というYouTubeの番組で、元オウム真理教幹部・上祐史浩のインタビューを見た。 かつて「ああいえば上祐」と呼ばれた達者な弁舌ぶりは健在で、これまでの生きざま、事件とのかかわり、麻原への帰依を捨て自己洗脳を解くまでのプロセス、これから…

山田順三(2)

山田ルイ53世(こと山田順三)「一発屋芸人の不本意な日常」を読む。 ”自ら〈負け人生〉と語る日々をコミカルに綴った、切なくも笑える渾身のエッセイ。” 元・一発屋芸人による自虐ネタ語りは、部分的には従来からよくあるパターンだと思うが、ここまで執…

How Deep Is The Ocean ?

ポール・ウィリアムズ 『ブライアン・ウィルソン&ザ・ビーチ・ボーイズ 消えた「スマイル」を探し求めた40年』 (五十嵐正訳、シンコーミュージック、2016)を図書館で借りる。 1948年にボストンで生まれ、”最初のロック評論家””ロック・ジャーナリズムの父”…

Long Promised Road

「ベイビー・ブローカー」を見た日にもう一本見たのが「ブライアン・ウィルソン/約束の旅路」。 この映画(ドキュメンタリー)は見る前から絶対に外さない確信があった。 ポップ・ミュージック史における二大天才の一人(もう一人はビートルズの存命中のあ…

希望

「ミニシアター・エイド基金」の催しで、のん(能年玲奈)が濱口竜介監督、深田晃司監督とトークしたようだ。 このサイトにイベントで語られた内容や当日の様子が詳しくレポートされている。 日本映画業界の構造的問題、ミニシアターの重要性、日本映画業界…

NDL

朝、土砂降りの中を国会図書館へ。開館時刻の午前九時半に着くと、既に土砂降りの中を百人位の人たちが入口に並んでいた。 コロナ以前であれば、開館時間内に行けば入場できないことはなかったのだが、今は在館者数が1,000人に達した時点で入館を拒否されて…

Baby Broker

映画「ベイビー・ブローカー」を見た。 去年、映画製作の発表があった時点から関心はあり、カンヌで受賞というニュースを見てますます見たいという気がしていたので、やっと念願が叶ったかたち。 是枝監督のカンヌ受賞で話題になった割には日本では客入りが…

山田順三

漫才コンビ〈髭男爵〉の山田ルイ53世こと山田順三の書いた「ヒキコモリ漂流記」という本を読んだ。「完全版」と謳われた文庫の方ではなく、2015年に出た単行本の方をkindleで買って読んだ。 一読して唸った。これは、立派な私小説ではないか。 小学生の頃は…

パパが貴族

吉田豪とのYouTubeの対談を見て興味を持ち、山田ルイ53世の「パパが貴族」という本を読んでみた。 非常に面白かった。文体に明らかな西村賢太の影響を感じた。 西村は山田と2021年5月20日(木)に「週刊SPA!」の企画で対談している。このときのことを西村は…

宮水をめぐる便り

「すばる」2018年7月号掲載の小説・二瓶哲也「宮水をめぐる便り」を読む。 その前に読んだ「ヒマラヤ杉の年輪」がなかなか面白かったので、他の作品も読みたくなった。 この小説も、三十代の男性が総合病院の清掃作業員のバイト面接の返事を待っているとい…

鳥居と麺と現金と皿と

江戸時代の農家で雨で作業のない日など、一日何もせずに過ごす生活に、スマホやネットに一日接触しないだけで世界から取り残されたように感じる現代人は耐えられないのではないか。逆に言えば、スマホやネットから生み出される人の陰性感情に昔の人は無縁で…

ヒマラヤ杉の年輪

「文學界」2020年8月号掲載の小説、二瓶哲也『ヒマラヤ杉の年輪』を読む。 岡崎祥久の「キャッシュとディッシュ」が読みたくて図書館で借りたのだが、そちらの感想は別に書くとして、こっちも意外と面白かった。 四十過ぎて病院清掃員の仕事に就いた独身男性…

Killing w/ Kindness

政治というのは建前の世界で文学は本音の世界だから両立させるのは無理があると思う。両立させるというのは、両方で一流の仕事をするという意味で、石原慎太郎や今東光は両立させたとはいえない。ウィンストン・チャーチルはどうなんだと言われたら、チャー…

Sly & the Family Affair Stone

朝五時に息子が下りてきて「背中が痛い」という。これまでに経験したことのない痛みで、まったく痛みが引く気配がないという。表面や筋肉ではなくもっと奥の方、内臓だと思うと。妻が救急相談ダイヤルに電話すると、三つの病院を紹介され、それがどれもつな…

Let's Get Into ANIMAL

酷暑のせいでそこはかとない嘔吐感が半端ない。一歩も動きたくない。 地球は優しくはないし、奴には中途半端な優しさは通じない。 13年くらい前に、文鮮明の自伝が日本で出版されたとき、読んでみて「きな臭い噂は無数に付きまとうが命をかけて世界平和とい…

Don't invite me (if U hate me)

「文藝」2021年冬季号所収の綿矢りさ『嫌いなら呼ぶなよ』を読んだ。 単行本も出たようだが、わざわざ図書館で「文藝」のバックナンバーをコピーして移動中の車中で読んだ。ちなみにぼくが本を読むのに一番集中できるのは電車の中だ。 今回はネタバレなしで…

I ME MINE

毎月四名ほどでの集まりがあって、最近はZOOMでやることが多い。 自分にとっては、オンライン会議が普通の会議と一番異なるのは、自分の顔が見えるということだ。集まって話をする場合は参加している自分の姿を意識することはあまりない。しかし画面にずっと…

Permission (not 2 Dance)

「文學界」2022年2月号に掲載されている小説、岡崎祥久「パーミション」を読む。 この作家の小説は未読で名前も知らなかったが、文學界の「新人小説月評」に、砂川文次「ブラックボックス」がよかった人にはお勧めと書いてあったので読んでみようと思った。 …

The Honor of a Value Disruptor

石原氏の政治家としての面には毫も興味を持てなかった。しかし六十を過ぎても七十を過ぎても、氏の作や政治発言に、かの『価値紊乱者の光栄』中の主張が一貫している点に、私としては小説家としての氏への敬意も変ずることはなかった。(「胸中の人、石原慎…

夜空が暗いのは?

とうとう読みたい小説がなくなってしまった。 去年(2021年)の初め頃から、自宅にあった大江健三郎(妻の所有本)をきっかけにそれまで無縁だった〈純文学の世界〉にハマることを試みて、西村賢太の私小説の面白さにぶつかって、そこから川崎長太郎とか田中…

リアリズム廖

小谷野敦が藤堂志津子を論じた「藤堂志津子と日本のリアリズム」を読んで、なるほどと思った。日本の純文学(通俗小説は言うに及ばず)が抱きがちな恋愛幻想みたいなものがない、女の側から恋愛のリアリズムを衒いなく描いているという点を評価している。 他…

暑中残影

藤堂志津子「マドンナのごとく」を読む。1987年、札幌市の広告代理店に在籍中に書いた小説で、第21回北海道新聞文学賞を受賞(熊谷政江名義)。1988年、第99回直木三十五賞候補(翌年「熟れてゆく夏」で第100回直木三十五賞を受賞)。 例によって例のごとく…